7月11日からドイツとフランスの演奏旅行に出ていて、昨夜遅くヘル
シンキに帰って来た。13日ぶりのヘルシンキは曇り空で気温も18度
とぱっとしない。陽光が降り注ぎ、28度から32度ぐらいだった南か
ら帰ってくると、勿論旅疲れもあるけれどなんだか気が沈むなあ。ドイ
ツでは3回、フランスでは1回のコンサートがあったけど、特に印象に
残ったのはデユッセルドルフの日本人クラブオーケストラとの協演で、
会場はロベルト・シューマン・ザール。700の客席が満席の盛況だった
が、何と言ってもオケの皆が力を合わせての素晴らしい演奏は本当に感激
ものだった。団員には元東フィルだとか東京交響楽団で40年ぐらい前の
若かりし僕としばしば協演したベテランも何人かいて、久しぶりだな〜と
懐かしかったし、ドイツ各地のオケで弾いている人たち、それに現地の音
楽院の学生、それからドイツ人にフィンランド人のプロの奏者も加わって、
素晴らしい音を響かせていた。最も素晴らしかったのは12歳ぐらいの日
本人奏者が3人もいて、大人に混じって少しの引けも見せず、見事な集中
力を発揮して難しいプログラムを弾ききったことだ。特にヨーロッパ初演
となった一柳慧のピアノ協奏曲第5番での演奏は、団員の皆がそうであっ
たが、難しい現代曲を堂堂と弾ききり、僕もピアノを弾きながら胸が熱く
なった。一柳慧のピアノ協奏曲は今年の9月29日に佐賀のアルモニア管
弦楽団とも弾く。このオケもノンプロの楽団だが元N響、東響、東フィル、
日フィル、東京都響、九州交響楽団などの合成軍に、大分や長崎、熊本な
どからも多数の奏者が加わり、一昨年は吉松隆のピアノ協奏曲<ケフェウ
ス・ノート>を演奏したが、なかなかの演奏だった。一柳さんのピアノ協
奏曲第5番は昨年8月下野竜也指揮の東京都響で世界初演、同10月の藤
岡幸夫指揮関西フィル定期での関西初演に続いて、今年はノンプロ・オケ
でも2回演奏されることになる。現代曲というと引っ込み思案に成りがち
だが、そんな必要はない。やってみれば難しい難解だ、でも皆と一緒に力
を合わせているうちに良さが見えてきて、それを掘り起こす喜びも出てく
るし、美しい、力がある、それも分かってくるから、苦労した後での楽し
みもまた大きなものになるんだ。あ、そうそう、デユッセルドルフではラ
ヴェルの<左手の協奏曲>も弾いたのだけど、これは自分でも久々の快演
だった。素晴らしい演奏が出来て嬉しくて嬉しくて踊りだしたいくらいだ
った。指揮の石川星太郎君もよかったな〜。ピアノは河合のフルコン。調
律の方が精魂こめて調整してくださった。私は河合やヤマハでは弾きませ
んなんていう人もいるけれど、そんなことには囚われないで、楽器は可愛
がっていれば鳴ってくるものだ。弾く人の愛情はちゃんと伝わるものだか
ら・・でも、昔北京で弾いたピアノ、あれは駄目だったな〜 「星海」て
名前だけは素晴らしかったけど、瓦礫の海みたいだった。